箱根予選会、【通過】と【落選】を分けた「1分46秒」|10人の合計タイムで見る勝負の厳しさ
10時間40分08秒と、10時間41分54秒。
2026年10月17日に行われた箱根駅伝予選会で、10位の法政大学と11位の国士舘大学の間にあった差は、1分46秒でした。法政大学が本大会への出場権を獲得し、国士舘大学は届きませんでした。
この1分46秒は、二人の選手がゴールした時刻の差ではありません。各大学の上位10人のタイムを合計したときに生まれた差です。
では、10人で積み上げた1分46秒を、どう受け止めればよいのでしょうか。公式記録と途中経過から、予選会の勝負の厳しさを読み解きます。
目次
- 箱根予選会は「上位10人の合計タイム」で決まる
- 10位法政大学と11位国士舘大学、その差は1分46秒
- 10kmでは国士舘大学が先行。途中経過から見る逆転
- チーム内の記録を比べると、何が見える?
- 1人平均10.6秒。その数字が意味すること
- 合計に入らない11・12番手にも役割がある
- 予選会を見るときに注目したい3つのこと
- まとめ|一人ひとりの1秒が、大学の結果になる
1.箱根予選会は「上位10人の合計タイム」で決まる
箱根駅伝の本大会では、区間ごとに一人ずつ走り、たすきをつなぎます。一方、予選会は各大学の選手が一斉にスタートし、それぞれがハーフマラソンの21.0975kmを走ります。
第103回予選会の出場人数は、1大学につき10〜12人。そのうちフィニッシュした上位10人の合計タイムが小さい大学から順に、10校が本大会へ進みます。
エースが早くゴールすれば、その分だけ合計タイムを短くできます。同時に、チーム内の中盤や後方を走る選手が刻む1秒も、同じように合計へ加わります。個人の走りを積み重ねて大学の結果を決める、それが予選会です。
なお、合計タイムが同じ場合は、上位10人の個人順位の合計で比較し、それでも決まらなければ各大学の最上位選手の順位で決定します。
2.10位 法政大学と11位 国士舘大学、その差は1分46秒
今回の通過ライン付近の成績を並べると、次のようになります。
| 順位 | 大学 | 上位10人の合計 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 9位 | 日本体育大学 | 10時間39分52秒 | 本大会出場 |
| 10位 | 法政大学 | 10時間40分08秒 | 本大会出場 |
| 11位 | 国士舘大学 | 10時間41分54秒 | 予選敗退 |
| 12位 | 武蔵野学院大学 | 10時間43分54秒 | 予選敗退 |
法政大学と国士舘大学の差は106秒。9位の日本体育大学と10位の法政大学は16秒差でしたが、いずれも本大会への切符を手にしました。その一つ下の順位との間には、出場できるかどうかの境界があります。
「10位」と「11位」は順位では一つの違いでも、その後に迎える冬の目標を大きく変えます。結果発表の瞬間に、選手や応援する人たちの感情が強く表れる理由の一つでしょう。
出典:日本テレビ・第103回予選会 総合成績。タイム差は公表値から算出。
3.10kmでは国士舘大学が先行。途中経過から見る逆転

最終結果だけを見ると法政大学が先着していますが、レース中も同じ位置関係だったわけではありません。日本テレビの記録速報では、両校の順位と合計タイムは次のように推移しています。
| 地点 | 法政大学 | 国士舘大学 | 両校の合計タイム差 |
|---|---|---|---|
| 10km | 14位/5時間02分02秒 | 8位/5時間00分26秒 | 国士舘が1分36秒先行 |
| 15km | 11位/7時間34分48秒 | 9位/7時間34分20秒 | 国士舘が28秒先行 |
| 18km | 9位/9時間04分13秒 | 11位/9時間05分35秒 | 法政が1分22秒先行 |
| 最終成績 | 10位/10時間40分08秒 | 11位/10時間41分54秒 | 法政が1分46秒先行 |
※途中経過は日本テレビの記録速報掲載値。順位はその地点での大学別順位であり、各大学の先頭選手の順位ではありません。差は掲載値から算出しています。
10km時点では、国士舘大学は通過圏内の8位、法政大学は14位でした。15kmで両校の差は28秒まで縮まり、18kmでは法政大学が前に出ています。
15km時点で通過圏内にいても、そこからの約6.1kmで結果は変わる。今回の途中経過は、その厳しさを示しています。法政大学も18kmの9位から最終的には10位となっており、通過争いが終盤まで続いていたことが分かります。
ただし、この表だけで「全員が後半に加速した」「特定の選手が失速した」とまでは判断できません。各地点で合計対象となる上位10人が入れ替わる可能性もあるため、個々の走りを評価するには個人別の通過記録も必要です。
出典:日本テレビ記録速報 10km/15km/18km/最終成績
4.チーム内の記録を比べると、何が見える?
次に、関東学連が公表した個人記録を使い、各大学の上位10人をチーム内のフィニッシュ順で比較してみます。
両校の最上位選手は、法政大学が1時間02分56秒、国士舘大学が1時間02分21秒でした。チームの先頭同士では、国士舘大学が35秒上回っています。
ところが、5人ずつの合計で見ると、次のようになります。
| 集計する選手 | 法政大学 | 国士舘大学 | 差 |
|---|---|---|---|
| チーム内1〜5番手の合計 | 5時間17分11秒 | 5時間18分18秒 | 法政が1分07秒速い |
| チーム内6〜10番手の合計 | 5時間22分57秒 | 5時間23分36秒 | 法政が39秒速い |
| 上位10人の合計 | 10時間40分08秒 | 10時間41分54秒 | 法政が1分46秒速い |
※関東学連の公式個人記録を、本記事で5人ずつに分けて集計。「番手」はその大学内のフィニッシュ順を指します。
最上位選手の35秒のリードを含めても、上位5人の合計では法政大学が前に出ていました。さらに6〜10番手の合計でも39秒上回り、全体で106秒差となっています。
この比較から見えるのは、先頭の速さに加え、複数の選手がどんなタイムで続くかが結果に直結するということです。「エースが強い」「10番手が速い」といった一つの指標に加えて、10人全体を見ると、予選会の結果をより具体的に理解できます。
なお、これは当日の記録の内訳を示したものです。練習内容や体調、当日の作戦の良し悪しまで、この数字だけで結論づけることはできません。
出典:関東学連・第103回予選会 総合結果(大学別上位10人の個人記録)。上表は同資料をもとに独自集計。
5.1人平均10.6秒。その数字が意味すること
1分46秒は106秒。これを10人で割ると、1人当たり10.6秒になります。
さらにハーフマラソンの距離で均等に割ると、1人につき1km当たり約0.50秒の差に相当します。
これは、差の規模を捉えるための平均です。実際に全員が同じ10.6秒差で走ったわけではなく、前の表のように、速い選手も遅い選手もいる中で合計差が生まれています。
また、「一人が10秒縮めれば通過できた」という意味でもありません。例えば、他の条件を固定して合計対象の10人全員が10秒速ければ、短縮できるのは100秒です。今回の106秒差には6秒届かず、106秒ちょうど縮めた場合も合計タイムが並ぶため、同タイム時の順位決定方法に進みます。
全力で21.0975kmを走った選手にとって、10秒を縮めることは簡単ではありません。それでも、一人が最後に粘った数秒が、ほかの選手の数秒と合わさって大学の結果になる。この積み重ねに、予選会ならではの団体戦の面白さがあります。
計算:公式合計タイムの差106秒を使用。1km当たりの換算は106÷10÷21.0975。順位決定方法は大会要項を参照。
6.合計に入らない11・12番手にも役割がある
12人が出走した場合、最終的に合計へ採用されるのは上位10人です。しかし、誰がその10人になるのかは、スタート前に決まっているわけではありません。
ある選手が苦しい走りになったとき、別の選手が順位を上げれば、チームの合計を支えることになります。11・12番手まで力を備えていることは、当日の変化に対応する余地にもつながります。
また、同じペースを目指す仲間と走ることや、互いを意識して粘ることも、レースの中で支えになる場合があります。今回の両校について具体的な役割分担を断定することはできませんが、観戦では、採用された10人に加えて出走した選手全員の挑戦にも目を向けたいところです。
そして、その走りを支えるのは、登録メンバーや出走選手だけではありません。日々一緒に練習してきた仲間、支援するスタッフや応援する人たちにも、それぞれの予選会があります。
7.予選会を見るときに注目したい3つのこと

① 通過ラインとの「合計タイム差」
順位だけでなく、10位付近とのタイム差を確認すると、どれくらい競っているのかが分かります。順位が同じでも、直前の地点より差が縮まっていれば、その大学の状況は変わっています。
② 大学の先頭から、その後に続く選手まで
エースの好走を楽しみながら、同じ大学の選手がどんな間隔で続いているかにも注目してみてください。今回の両校のように、先頭の位置と大学全体の順位が一致しないケースがあります。
③ 後半の途中経過と、最後まで走り切る姿
15kmや18kmの大学別順位を追うと、ゴールへ向かう勝負の動きが見えてきます。途中順位はその時点の状況であり、出場権の確定ではありません。中継に映る一人の粘りが、まだ見えていない大学の合計にどうつながるのか。そう考えると、最後まで目が離せなくなるでしょう。
8.まとめ|一人ひとりの1秒が、大学の結果になる
法政大学と国士舘大学を分けた1分46秒は、各大学の上位10人が走った結果の差でした。
10kmでは国士舘大学が先行し、18kmでは法政大学が逆転。さらに個人記録を集計すると、チームの最上位選手だけでは見えない勝負の内訳が浮かび上がります。
一人が稼いだ時間も、苦しい中で守った時間も、合計の中では同じ1秒です。本大会への切符を手にした選手にも、届かなかった選手にも、そこまで積み重ねてきた時間があります。
次に予選会を見るときは、大学の順位に加えて、その結果をつくる一人ひとりの走りにも注目してみてください。数字の意味が分かるほど、フィニッシュまでの一歩一歩を、より深く感じられるはずです。
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参考資料・関連リンク
本記事は2026年10月20日時点の公表資料をもとに作成しています。各種の差・平均・5人ごとの合計は、公表記録から本記事で計算した値です。


